今まで健康だった人が、急に病気を発症したり、ガンを宣告される。或いは不慮の事故に会って不自由な体になり、日常生活が一変する。
そんな時誰もが思うはず。「何で私が?」「どうして私がこんな目に合うの?」
私もそんな思いを抱えながら、毎日のように泣いていた時期がありました。
そう簡単には受け入れられないのです、不条理な現実が。
お前はもう、正常な人間の枠からこぼれおちた、落後者なんだと宣告されたようで。
他の人は普通に出産して、育児して、仕事と家庭を両立させて、それでも健康で元気な人達が沢山いるのに。なぜ自分には同じ事が普通に出来なかったのだろう?
自分の何が悪かったのだろうか?
確かに不完全な人間ではあるけれど、それでも自分なりに懸命に頑張ってきた。
仕事で腹立たしい状況に陥っても、人間関係で嫌なことがあっても、それを糧にして出来る限り前向きに乗り越えて、生きてきたと思っていた。
同じ状況下でも、病気を発病する人と、しない人がいる。
もちろん個人的な体質や体力差はあるし、遺伝とか生育環境もあるだろう。
思い出したくない現実だが、事実私は産後うつ病になった。完治したと思っていたのにまた再発した。認めたくはないが、それが事実だ。
残酷な事実を突き付けられた時に、まず初めに来る反応は、自分が脳(精神)の病気であることの否定や診断への反発。苛立ち。不条理感。
そして日々苦悩にあがきながら治療を進める中で、徐々に自分自身の中に自分を突き放して眺めるような視点が生まれ、自分はもう以前と全く同じ自分には戻れないとの切ない諦めが生じる。
自分が病気であることを認め、少しずつ辛い現状を受容していく、という過程を経てきたように思う。でも、それは本当に、身を切る様に辛い作業でもあります。
殆どまともに体を動かせず、何もできず、どこにも行けず、寝たきりの状態の時は、自宅のベランダにやってくるスズメを見ることだけが、ささやかな楽しみでした。
大好きな本も読めない。音楽も聴けない。友人にも会えず、自宅にほぼ引きこもりの毎日。出口の見えない苦しみとの格闘だけが延々と続く、終わりのない地獄。
死んでないだけ。言い換えれば、生きながら死んでいるような状態だということ。
こんな私に生きている意味ってあるんだろうか?
死んでしまいたいな、もう疲れたな。生きていても家族に負担と迷惑をかけるだけだし。毎日のように何度も何度も、そんなことばかり考えている時期もあります。
家族の支えと、無償の愛情と、息子の笑顔。それが無ければ、本当に今、こうして生きてブログを書いていなかったかも知れません。
今も治療は続いていますし、地獄の責め苦のような状態に陥る時もまだあります。
なので、自分の頭がまともに考えられる間に、少しでも何かが出来る元気があるうちに、自分が格闘してきた軌跡を残しておきたいと思い、このブログを始めました。
私と同じような病気になり、辛い思いを味わい、同じような苦しみに陥っている人や、思いがけずそうなってしまった人に、何か少しでも役に立ってもらえれば、私自身も救われる。そう願って書く元気がある時に、何とか頑張って書いています。
未来のことは誰にも分りません。
私と同様に、誰だって今日と同じように明日を迎えられる保証なんてないんです。
私達人間は、生きている限り皆全員、処刑日を知らされていない死刑囚なんです。
私はこの病気になったおかげで、自分がこれまでいかに幸せだったか、普通に毎日を過ごせることは、実はそれだけで奇跡なんだということを、心の底から実感しました。
だから例え明日死んでも、未練は残るし残念だけど、でも悔いのない生き方をしたい。自分のやりたいことを一つでも実現したい。家族や友人を大切にして、身近な人だけでも幸せにしたい。何か少しでいいから、誰かの、社会の、役に立ちたい。
今は、毎日そう思って生きています。
寿命を刻む時計の音のカウントダウンを聞きながら。
私はこれからも最期まで諦めずに、何とかあがいてみるつもりです。
生涯治療薬を飲み続けることになるかも知れないけれど。
それでも何度も何度も再発や悪化を繰り返すかも知れないけれど。
でも、生きていられるのは、こんな私でも大切に想ってくれる家族がそばにいてくれるからです。
今、不条理な日常に苦しんでいる全ての人に言いたい。
それでも、毎日仕事に行けて、食事が普通に食べられて、買物が出来て、友達と時々飲めるなら、それはとても幸せなことです。大切に過ごして下さい。
眠りたいのに眠れない、食べられない、体や頭が思うように動かない。
そこまで疲れ切ってしまった人は、一刻も早く専門医を見つけて、治療して、休養を取って下さい。
命より優先しなければならない仕事なんて、この世にはありません。
自分の命と、健康と、自分と家族の幸せが何よりも一番大切です。
健康であれば、再度挑戦が出来ます。健康は一度失えば、取り返しがつきません。
発病に至るまで、自分がかなりの無理をしていた事に気付かず、結果として病状を悪化させてしまい、治療が長期化することになってしまった自分自身への反省を込めて、心からそう伝えたいと思います。